犬のPTSD ~トラウマを抱えた犬たち~(後編)」
こんにちは!ドイツ仕込みの動物自然療法士・ティアハイルプラクティカーの野原です。
早速ですが、前回の続きです。
犬にもPTSD(心的外傷後ストレス障害)が存在するというお話。
前回記事はこちらから→★
【出典】
ATM Online Magazin(2020年9月22日掲載)
筆者:Frau Maria Hense(ドイツ獣医師)
「犬のPTSD?~トラウマ後の障害」
https://www.atm.de/blog/redaktionelles/ptbs-beim-hund-folgestoerungen-durch-traumata
(PTSDはドイツ語でPTBSと略されます。)
(文章中に出てくる参考文献は上記URLの最後に紹介されています。)
ーーーーーーーーーーーー
PTSDの診断
「トラウマが原因の障害」を述べるには、トラウマになるような出来事が1つ前歴として認知されていなければなりません(Ehring und Ehlers 2019)。
そうでない場合は推測でもいいのですが、診断は不確かなものになります。
多くの犬に関しては、この"前歴"が(飼い主に)充分認識させていないのです。
しかし、それでもその犬がPTSDが疑われる症状を見せているのであれば、「トラウマが原因の障害」というのを推測することは重要だと、私は考えます。
確説:米軍用犬のPTSD
米軍は人間の兵士だけでなく、軍用犬も戦場に起用します。戦場に赴く前の訓練の際、彼らは特段不耐力とストレス耐性がなければなりません。
軍用犬が人間と同じようにPTSDになるということを、米軍は2010年に初めて確認しました。
今日では、戦場で起用されることによって軍用犬がC-PTSDという心的外傷後ストレス障害を発症するということが認定されています。
人間ではおよそ20%の兵士がトラウマを抱えて帰還しますが、約1700頭中の5~10%の軍用犬が、軍用時のトラウマ体験を経て、音への極度な反応/不安、パニック、攻撃性、人間や人間の集まりへの嫌悪感といった、似たような症状を見せるのです。
それらの犬は獣医療や行動心理学でもって治療されました。大抵はプライベートな環境やトレーニングセンターで看られ、中には「オランダ軍用犬動物病院」に行った犬もいました。
3か月以内に改善が見られない場合、当該犬は症状の重さにより、一部の軍用にのみ起用されるか、あるいは里親に出されました。
「Combat Canines:The DDoc Foundation」といった非営利活動法人が、この役目の終わった軍用犬を受け入れる新しい里親へ、費用の負担を肩代わりするなど手助けをしました。
不安のない普通の生活に戻るためのしばしば長期にわたる、治る保証のない治療の費用を当該の団体が請け負うのに、C-PTSD(犬の心的外傷後ストレス障害)の診断が認められています。
つまり、行動は上書きで修正できるものの、記憶はできないのです。
当該犬と普通の日常を過ごすことは可能ではあるものの、あるトリガー(爆音、雑音、音、身振り、出来事など)がきっかけとなり、その問題が改めて急に現れることもあります。
トラウマになった出来事の後の治療が早ければ早いほど、傷が癒えるチャンスが大きくなります。
トラウマの課程(ペリトラウマ:トラウマ発生中)
生物が衝撃的な出来事を体験すると、特定の方法で協同している大脳辺縁系と大脳で処理されます(Westedt 2013)。その後、身体は興奮(ストレスリアクション)や対処しようとする反応を示します。それから再び弛緩し休息に入り、その出来事はメモリーに整理され、保存されます。
トラウマになる出来事の場合、大脳、感情中枢、そしてストレス調整構造が乱されることによってストレス反応と関連する過剰な感情リアクションが起こります。
その出来事が起こっている間、大脳は全て、もしくは一時的に機能しなくなります。そうなることによってその生物は自身の行動を考えたり制御することができなくなってしまうのです。
とりわけ、感情と身体感覚が脳に保存されます。周囲の刺激は断片的に記憶され、このような記憶の枝は些細なことのようにみえるのです。
例として、ある人がビールの匂いは覚えるけれど外装は覚えないとか、歩いている犬が黒い物体に反応するが足の動きには反応しないとかです。
このように説明できないけれど、ものすごい感情や身体反応を起こすような「トリガー」らしきものが発生します。
大脳や身体に起こるこのリアクションはとても強いため、調整メカニズムが機能不全に陥ります。
その生物は弛緩したり休息することなく、アラームが出たままの状態になるのです。
トラウマ後の課程の移り変わり(ポストトラウマ:トラウマ後)
人や動物がトラウマ後に体験することに対して、以下の事象が伴います。
・ストレス反応が継続する。常にアラーム状態に陥る。(Nagasawa et al.2012)。
・感情中枢の要素は過剰に反応する状態になっている。
・他愛ないと思われる「トリガー」が強烈な感情と身体反応を引き起こす可能性がある。
・大脳の働きが制限される。感情の制御が難しい。複雑な課題を克服したり学ぶことができない。
トラウマ発生時、トラウマ後の神経学の詳細については、例えばvan der Kolk(2016)やHuber(2009)の論文をご参照ください。
最後に
犬の中には、人間のPTSDに非常に似ている突出した行動をとるものもいます。
だからこそ、犬にも心的外傷後ストレス障害があり、それに焦点を当てたトレーニングや治療があるということが意味をなしています。
どの治療法が合うのかは、次回ご紹介する犬のPTSDに関する2回目の記事にてご紹介します。
ーーーーーーーーーーーー
ということで今回の記事はここまでなのですが、実はその続きがまだ掲載されていません💦
気になるところで終わってしまったような感覚であるものの、犬にもPTSDがあり、その子たちを治療するには相当な努力と忍耐が必要なことが分かりましたね!
しかも日常生活をおくれるようになってもトリガーがきっかけで再発しうるということで、非常にやっかいな病気だと思います。
人間の世界に「適材適所」「天職」なんて言葉があるように、使役犬だろうと軍用犬だろうとセラピー犬だろうと、向き不向きがあり、そこをしっかり判断するのが共に生きる人間の役割なのでしょう。
(戦場に行かされる犬に至っては向き不向きもへったくれもないですが・・・)
久しぶりにドイツ語翻訳しましたが、うーん、本当に難しいですね💦
頭のためのいいトレーニングになりました!
本日もご訪問頂きありがとうございました!
0コメント