犬のPTSD ~トラウマを抱えた犬たち~(前編)

こんにちは!ドイツ仕込みの動物自然療法士・ティアハイルプラクティカーの野原です。


早速ですが皆さんはPTSDという言葉をご存じでしょうか?


英語でPTSD – Post traumatic stress disorder

「心的外傷後ストレス障害」と言われており、トラウマになるようなショック体験をした後、いつまで経ってもその経験に対して強い恐怖を感じてしまう状態に陥ることです。


人間の世界ではよく耳にする言葉ですが、動物の世界でも存在するのでしょうか?


今回は犬さんのPTSDに関する記事をご紹介します!


【出典】

ATM Online Magazin(2020年9月22日掲載)

筆者:Frau Maria Hense(ドイツ獣医師)


「犬のPTSD?~トラウマ後の障害」

https://www.atm.de/blog/redaktionelles/ptbs-beim-hund-folgestoerungen-durch-traumata

(PTSDはドイツ語でPTBSと略されます。)

(文章中に出てくる参考文献は上記URLの最後に紹介されています。)


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動物愛護活動家、動物トレーナー、動物医療従事者らはたびたび、犬にまつわる悲惨な話に出くわします。

その犬たちの多くが、ベテランのトレーナーやセラピストの通常のテクニックではいい影響を与えられないような、異様に屈折した行動や異常な態度を示します。

私がこれらの行動を説明するために辿り着いたのが「PTBS(英語でPTSD):心的外傷後ストレス障害」という表現でした。


この言葉の概念は人間の分野において、非常に劣悪な経験の後遺症として起こる心理的障害とされています。

犬の専門家らは人間のPTSDが特定の犬にも当てはまるという見解で一致しています。

この診断が犬にも使われるのであれば、それは「C-PTSD(Cはcanineいぬ科の意味)」と言われることでしょう。(例:Dodman 2016)



PTSDの定義

「心的外傷後ストレス障害」の概念は、トラウマが発生した後に発生する障害です。

トラウマというのはものすごい脅威/脅迫を経験する出来事であり、それに出くわした人が全く行動することができない、もしくはその状況から自身を救い出そうと試みたが、その状況を解決するに何もすることができないと感じてしまうような、大変ショックの大きい事柄です。

この状況の下、強烈な感情と身体的反応が伴います。

トラウマは事実として起こったことでも、寸前で回避されたことでも、あるいは他人に起こっているところを目撃することでも発生する可能性があります(Ehring und Ehlers 2019参照)。


人間においてのトラウマの例としては、事故、病気、犯罪、拷問、人質などです。


犬においては、家を失うこと、事故、虐待(トレーニングという名の虐待も該当:Alupo 2017参照)、獣医師による処置、トリミング、捕まえられること(野良犬などの場合)、運搬、暴行(繁殖雌犬)などで起こりうります。


トラウマは一度きりの出来事でも、複数回のトラウマでも、体系的な暴力(動物を従順にさせるために計画された継続的な暴力(=要は罰のみ用いたトレーニングですね))でも起こり得るのです。


トラウマになる出来事による人間と犬のリアクション、症状

ひどい出来事というものは、その人物に既に負荷がかかっている状態、かつ/もしくは、その状況において社会的擁護がない場合、とくに重く響きます。

特に悪いのが、(普段関わりのある)特定人物が原因だったりする場合です(Raddemann und Dehner-Rau 2007参照)。


以下のように、様々なリアクションが考えられます。

・急性トラウマ後遺症(自身の健康状態や行動にゆがみが生じるがそれは短期間であり、最大数週間継続する。)


・慢性トラウマ後遺症(ゆがみが一か月以上続く。この状態をPTSDと言う。)


・複合トラウマ後遺症(複数のトラウマが合わさり、長期間継続する。「コンプレックスPTSD」と言われている。)


人間に生じる症状は以下のカテゴリーに分けられます:

①トラウマと同じ経験をすることが、怒りや恐怖といった強烈な感情と強い身体的過敏さと結びつく。


例えば・・・

・侵入思考(精神的にどっぷりトラウマのシチュエーションに陥ってはいないものの、ありありと思い出す)

・悪夢

・フラッシュバック(その脅威がないにも関わらず、メンタル的に完全にトラウマ状態に陥る)

侵入思考とフラッシュバックは、周りの環境やその人物自身の触覚や思考といった「トリガー」によって出現します。


②その出来事に関連のある「トリガー」やシチュエーションを避けようとする。


③増幅した当時の危機を持続して知覚している。

例えば、警戒心の増加、緊張、そして/あるいは不測の物音などの刺激に過度に驚くなど。


コンプレックスPTSDになると:

④感情のコントロールに重度の問題がある(小さなきっかけで大きな感情が沸き起こる。人の場合、その際コントロールしたり抑えることが難しく、落ち着くまでに時間がかかる。)


⑤心神耗弱、劣等感、無価値感といった考えを継続的に自身に抱く。


⑥継続した関係性を保つことが常に困難となる。


これらの症状は様々な強度、コンビネーションで発生します(ICD-11参照:ICDとは2018年出版の病気国際公認リストで、医師が診断する際に役立っているものです)。



⑤を除いて、ここで述べた全ての症状が似た形で犬でも見られます。


例えばトレーニングでの事例でいくと、

・人の手に握られた物のような小さなきっかけにさえも、過剰なリアクションをとる。

リアクションの強度により、侵入思考かフラッシュバックとみなすことができる。


・侵入思考/フラッシュバックの最中:人間または他の動物に対して襲撃する。

このような極度の「フラッシュバック」は稀であるが起こり得る。


・悪夢を見る(睡眠中に叫ぶ、そして/もしくはバタバタする)。


・悪い経験を思い出すようなシチュエーションを避けようとする(例:トレーニングにトラウマのある犬はトレーニングする状況を避けようとする)。


・興奮、多動の状態が続く。


・感情、リアクションをコントロールするのが難しい。


・特定人物に対して非常に相反する行動をとる(例:近寄ったり走り去ったりを繰り返したり、近くで飛び跳ねる(粗暴な遊び、噛みつきがよくある)。



多くの学者が犬のPTSDを研究しました。

兆候としてありうるのは、一般的にストレス症状、自傷行為、学習能力の低下、過剰なリアクション、過剰な警戒心、睡眠障害、悪夢、常に怖がり、驚く、後ずさり、全て回避しようとする、トリガーを避ける、異常な執着もしくは愛着の喪失(人や動物に対して)などということです(Dao 2011,Nagasawa 2012,Dodman 2016,Alupo 2017)。


Alupo氏(2017年)は次のように記しています。

「これらの症状は、人間のPTSDの診断をする際の鍵となる基準に似ている。」



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本日はここまでです!

ああ、ドイツ語翻訳難しいです💦

わかりにくい文章になっていたら申し訳ないです。


ではでは、後編に続きます。



本日もご訪問頂きありがとうございました!